2014年5月31日土曜日

脱出をかけたギャンブル

以下のお話は,『有理数』,『無理数』,『連続一様分布』といった数学に関する知識を読者が持つことを仮定しています.



「脱出をかけたギャンブル」

目が覚めるとあなたは,地獄で裁きを受ける人々の列に並んでいました.
人々の列が進み,次はあなたが裁きを受ける番です.
案内された先の部屋では,小柄な老人が椅子に腰掛け目を閉じていました.

あなたが来たことに気づいた老人は,目を開けて,にやりと笑い,言いました.
「おまえはギャンブルに興じた人生を送ったみたいだな.娑婆でのいくつかのことは,これからここでゆっくり思い出すことができるだろう.さて,率直に言うと,おまえには二つの選択肢がある.一つ目は,100年間地獄で苦しむ.その後は,それまでの100年次第で改めて決まる.もう一つは,とある条件を満たすまでは地獄で苦しむが,条件さえ満たせばすぐに天国へ移ることができる.さて,どちらを選びたい?」

一つ目の選択肢を選ぶと,必ず100年間は地獄での苦しみを受け入れるしかないみたいです.加えて,苦しんだ後にどうなるかわからず,もっと酷いことが待ち受けているかもしれません.

二つ目の選択肢を選ぶと,あなたには地獄謹製の『実数を即座に有理数か無理数かを判定できる装置』と『0から1までの区間で定義される連続一様分布に従う乱数生成装置』が渡されます.とある条件は,その乱数生成装置から有理数を得ることで満たされるそうです.

地獄で苦しんでいる間にどのくらいの時間を装置での乱数生成に費やすことができるかわかりませんが,0から1までの間には無限個の有理数があることを考えれば,一つ目の条件を選ぶよりも早く地獄を抜け出すことができるかもしれません.

さて,あなたはどちらの選択肢を選びますか?




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