2014年5月31日土曜日

脱出をかけたギャンブル

以下のお話は,『有理数』,『無理数』,『連続一様分布』といった数学に関する知識を読者が持つことを仮定しています.



「脱出をかけたギャンブル」

目が覚めるとあなたは,地獄で裁きを受ける人々の列に並んでいました.
人々の列が進み,次はあなたが裁きを受ける番です.
案内された先の部屋では,小柄な老人が椅子に腰掛け目を閉じていました.

あなたが来たことに気づいた老人は,目を開けて,にやりと笑い,言いました.
「おまえはギャンブルに興じた人生を送ったみたいだな.娑婆でのいくつかのことは,これからここでゆっくり思い出すことができるだろう.さて,率直に言うと,おまえには二つの選択肢がある.一つ目は,100年間地獄で苦しむ.その後は,それまでの100年次第で改めて決まる.もう一つは,とある条件を満たすまでは地獄で苦しむが,条件さえ満たせばすぐに天国へ移ることができる.さて,どちらを選びたい?」

一つ目の選択肢を選ぶと,必ず100年間は地獄での苦しみを受け入れるしかないみたいです.加えて,苦しんだ後にどうなるかわからず,もっと酷いことが待ち受けているかもしれません.

二つ目の選択肢を選ぶと,あなたには地獄謹製の『実数を即座に有理数か無理数かを判定できる装置』と『0から1までの区間で定義される連続一様分布に従う乱数生成装置』が渡されます.とある条件は,その乱数生成装置から有理数を得ることで満たされるそうです.

地獄で苦しんでいる間にどのくらいの時間を装置での乱数生成に費やすことができるかわかりませんが,0から1までの間には無限個の有理数があることを考えれば,一つ目の条件を選ぶよりも早く地獄を抜け出すことができるかもしれません.

さて,あなたはどちらの選択肢を選びますか?




2012年9月9日日曜日

OctaveとJavaの連携について

 JavaからOctaveを呼び出すというすごくニッチな話。
 どういうときに便利かというと、Octaveでサクッと行列計算が必要なアルゴリズムを書いたのはいいけど、その後でGUIが欲しくなったというときに便利。
 とりあえずアプリケーションの形にしてしまいたいときに効果を発揮するのですが、果たしてどのくらいの人がこの記事を必要とするのだろう。

 とにかく、始めましょう。

   Octaveの実行ファイルに対してパスを通しておいて、RuntimeクラスやProcessクラスあたりを使って標準出力とやり取りをするという方法もあると思うのですが、今回はライブラリを用いてOctaveを使ってみたいと思います。
   といっても、Octaveの実行ファイルにパスを通しておく必要があるのは同じなのですが。

   今回使うライブラリのサイトは
   http://kenai.com/projects/javaoctave/pages/Home
です。
   必要なのは、
これら二つのjarファイルです。

   あとはEclipseならプロジェクトファイルにjarのパスを通せばJavaからOctaveが呼び出せるようになります。使い方もサンプルコードを見ればだいたいわかるので無事終了。
 サンプルコードを見るとわかるのですが、計算結果を簡単に得られることが利点だと思います。Runtimeクラスを使うよりは楽だと予想しています。

 使ってみて気づいた点としては、
  • 自作の関数でもプロジェクトファイルに入っていればeval関数で使うこともできました。
  • また、スクリプトを読み込ませたいのであればファイルからStringに読み込んでおいてからeval関数を使うと上手くいくようでした。
くらいでしょうか。


 既に書いたように、行列計算が割と簡単にできるというOctaveのメリットを享受しつつ、GUIを加えてちょっとしたアプリケーションにしたいときにこの方法を使うと楽ができるのではないかなと思います。
 なんでもMATLABで頑張るとGUIアプリケーションのようなものができるらしいので、MATLABとほぼ互換のOctaveでもGUIが作れるのかもしれませんが、JavaのSwingでGUIを作るほうが速いよって人に向いているかもしれません。

   

2012年6月10日日曜日

Octaveで2変数関数の曲面をプロットする

   フリーな数値解析ソフトOctaveを用いた2変数関数の曲面のプロットがおもしろかったので少し紹介します。


   まずは、関数



のグラフを示します。



   上のようなグラフを表示させるコードにはOctaveのプロンプト上で以下のコードを打ち込みます。

x = linspace(-10, 10, 10);
y = linspace(-10, 10, 10);
[X, Y] = meshgrid(x, y);
z = X.^2 + Y.^2;
figure(1); clf;
surf(x, y, z);
xlabel('x');
ylabel('y');
zlabel('z');
title('z=x^2+y^2');



   zを足し算ではなく引き算に変更すると、所謂、鞍点が存在するグラフになります。




   ソースコードは上記とほとんど同じなので、4行目の変更点だけを載せますが、必要ないかもしれないですね。
z = X.^2 - Y.^2;

   グラフを見ると、改めて原点が極値の必要条件を満たしているものの、極値ではないことがよくわかります。

   興味がある人は、Octaveをダウンロードして、微積分の教科書を引っ張り出して他の関数も打ち込んでみると楽しいと思います。(少なくとも、僕は楽しかったです)
   当然ながら、教科書に載っている極値を求める演習問題は、ほとんど鞍点を持つようなグラフになっていることが確認できるはずです。
   この鞍点が極値かどうかを計算によって判定していたのだなと思いながらグラフを眺めるのもまた一興ではないでしょうか?



   Octaveの関数の使い方についてよく参考にするサイト
[1] GNU Octave: 日本語マニュアル

   初めてブログ内に数式を表示にするにあたって参考にしたサイト
[2] ウェブページで数式を表現するための1つの解決法

2012年4月29日日曜日

ニノマエの時を止めるSPECについて

   こういうことを考えるのは無粋だとは思うのですが、映画「SPEC~天~」でニノマエが電流によるダメージを喰らうのを見て考えずにはいられませんでした。

   ニノマエのSPECについて改めて書いておくと、彼自身が語るところによれば、彼のSPECは時を止めるのではなく、すべての物や人はそれぞれの時の流れを持っており、彼だけがその流れの中を非常に速く進むことができるため、周囲から観察すると時を止めて行動したかのように見える、ということだったと思います。
   加えて、ニノマエが望む人物を彼の時の流れに取り込むことができ、取り込まれた人物も彼と同じ時の流れの速さで行動ができるようになり、その結果として会話や移動が可能になるという説明もあったように思います。

   こういった時を止める能力を考えたときに問題となるのが、自分以外のどの程度の物までの時を止めるかということです。

   当然ながら自分の体内の時の流れを止めるわけにはいきません。心臓が止まると息ができないですし、脳の活動が停止すると考えることができなくなり、挙げていけば困ることはいくらでもあります。
   さらに、外界についても止まってもらうとまずいことがいくつかあります。
   空気中の原子の運動が止まれば圧力が無くなるので、一度動けば体内からの圧力との平衡が取れなくなり身体が破裂すると考えられるので、空気というものの時の流れも彼の時の流れに取り込む必要があります。
   光も止まると困りそうです。光が止まると誰がどこにいるかがすぐにはわからなくなってしまいます。手探りで何がどこにあるかを探していくのは効率が悪いです。

   しかし、光を動かそうとすると他の問題が発生します。光を発生させようとすると往々にして電気が必要になります。部屋の明かりを有効にするには電気の供給を止めるわけにはいかず、電気の供給を止めるわけにいかないということは発電所を止めるわけにはいかないということになります。
   すると、例えば火力発電所であれば、発電機の役割をするタービンがニノマエとその周辺以外の時が止まった空間で轟々と回っていることになり、電力の需要と供給のバランス等を考えると問題が発生しそうです。

   したがって、光はニノマエのSPECに含まれる形で都合よく供給されているとしておくのが良さそうです。
   発電所が動いていることにしても良いのですが、その場合は電気製品を非常に細かく分類して時を止めるものとそうでないものに分けることになります。そうすると、発電所を動かすならそれを制御するコンピュータが動いていないと発電所が故障するでしょうし、そこのコンピュータを動かすと発電所に勤める人は、ニノマエがSPECを発動するたびにコンピュータの時計が速く進んでいるのを直す必要があるように思われます。もちろんそれ以外の問題もあるでしょうが。

   すると、ニノマエのSPECはある程度都合よく時の流れを動かす必要があり、そこまでを含めたSPECがニノマエに発生したとしておくのが、こちらとしても都合が良さそうです。
   ニノマエが意識して頭の中に時を止めるものの一覧表を持っているよりも、彼のSPEC自体がそれを受け持っているので、彼はそこまで意識する必要がないとしておかないと、最初にSPECが発動した際に彼だけ死ぬか意識を失うということがありそうです。教える第三者がいるとすると、そいつはどうやって会得したのだとなりますし。

   以上のように考えると、ドラマ内の毒によるニノマエ対策は理に適っているように思えます。なぜなら彼に付着した毒は彼と時の流れを共にすることになり、結果として彼だけ毒が速くまわり気を失うことによりSPECの発動が停止するというシナリオは、それほど無茶ではないと思います。

   問題は、映画のようにキャリーバッグ内の高電圧発生装置は、ニノマエの時の流れに含まれるか否かです。
   放出された釘に触った瞬間に含まれるとすると、過去に銃弾に触ったときに銃弾が動き出してもいいはずです。
   電気はニノマエと時の流れを共にすると考えると、先ほど考えたようにコンピュータの時計が狂い、とてもわかりやすい形で時の流れが変化したことがわかります。さらに先ほどは限定的な電化製品が対象になったのに対して、今度はすべての電気が含まれないと整合性が取れにくくなるので銀行のATMや宇宙の観測システムやら多くの機器に影響が及びます。

   宇宙の観測システムに影響が及ぶなどと言い始めると、惑星の動きは止まっているのかといったことまで考える必要があり話が長くなりそうなのでしませんが。

   何が言いたいかというと、電気によるニノマエ対策を当麻が考えるのはおかしいのではないかということです。
   ニノマエが時の流れを異にするのを知っていながら自爆攻撃を仕掛けようとした津田と同じくらいおかしいのではないかと思います。

   しかしながら、映画ではニノマエが電流によるダメージを受けているので、その点について考慮する必要がありそうなので、僕が考えた可能性をいくつか挙げると、


  • ニノマエのSPECについての考察に誤りがある。これはまず最初に考えられるべきです。もっとも今までの文章が見事に無駄になりますが。
  • 実は当麻がSPECを使っていた。当麻のSPECが消えていなかったとしてもいいですし、当麻は二つ以上のSPECを持っていたとしてもいいです。一人一つのSPECとは今のところ断られていないはずです。
  • シンプルプランの裏、またはファティマ第三の予言に関わる何者かによるシナリオの結果。白い帽子の男や、ニノマエのクローンを作成したものが関わっている。
  • そうしないと当麻が負ける。それを言っちゃあ・・・。


   最後はメタな可能性ですが一応入れておきます。
   そういえば、白い帽子の男とニノマエのクローンを作成したものは別グループであるとするべきか、そうでないとするべきかという疑問も残っている気がします。

   いずれにしても、今回の映画はこれまで以上に謎が増えておもしろくなってきたと同時に、整合性を取るのが難しいというのが感想です。一度しか見ていないので、何度か見れば整合性を取る手がかりが見つかるのかもしれませんが。

   SPECという普通の人間の能力を超越した対象に対して、理に適うとかは特に意味はないのですが、現実に存在しようとすれば当然ながらそれなりの整合性を取る必要があるし、何よりも一度考えておくと面白いのでこうして文章にしてみました。それほど考える負担にもならないですし。

   神木君が進んでしまった時計を一生懸命、しかも最初に戻す時計は最後に戻す時計に辿り着くまでの時間を計算して、戻して歩くのもそれはそれで見てみたいですが。






2012年4月17日火曜日

『SPEC~天~』の映画を見てのわずかばかりの感想

   『SPEC~天~』を映画館で見たのでわずかばかりの感想を。
   わざわざ映画館まで映画を見に行くのが面倒というダメダメ体質なので、気がついたら上映期間が終わっていて、しょうがないからテレビ放送かDVDを待とうということになるかなと思っていたのですが、意外にも映画館の近くに行くことがあり時間もちょうどよかったので見てきました。

   という、言い訳らしきことをしたところで感想を。

   とにかくおもしろい映画でした。
   時間が経つのもあっという間で、どう考えても『SPEC~?(=結)~』で終われないだろうというくらい新たな伏線を張って終わってしまいました。
   いくつかはコミックで読んだ『SPEC~零~』の伏線を回収していたのですが、『結』用なのか完全に回収していないものもありました。

   回収した代表は『マダム陽』で、回収しきっていない代表は『謎の男と少女』。
   『零』を読んでいなくてもわかるようになっていると言えばなっているので、『マダム陽』は伏線とかではなく新規登場人物であり、『謎の男と少女』は新たに張った伏線と捉えたほうが良いのかもしれません。
   とは言っても、知らないと『マダム陽』は唐突と思えなくもないかも。(もしかして、ドラマシリーズで出てました?)

   ストーリとしては雅ちゃんが野々村係長の手紙を読むところから始まるのですが、たしか202'?'年くらいで野々村係長、当麻、瀬文ともに手紙によると死んでいるようです。
   それに関係するのがファティマ第三の予言であり、2012年9月に起きたある事件について映画は進行していきます。

   ファティマ第三の予言というのは僕は聞いたことがなかったのですが、詳しい人には結構有名な予言なのでしょうか?
   僕としては、その中に出てくる左手に炎の剣を持つ天使が、左手に(SPECを持つ者にとっての)冥界へと繋がるSPECを持つ当麻を表し、ファティマ第三の予言をなぞるように『結』のストーリーが続くのであろうという、誰しもが思いつきそうなそれでいて具体的にどう展開するかはわからないということしか考えつきませんでした。

   それではストーリー周辺の話へ。

   まず、津田助大の爆弾特攻はらしくない。ニノマエが時を止めるSPECを持っていることは周知の通りなのだろうから、不意打ちならともかく自ら爆破するぞというのは何故そのような戦術を試みたのか甚だ疑問。
   これまでの津田の敵討ちだから冷静さを失っていたからではなく、まだ津田がいるとか、あるいは爆破は何らかの隠れ蓑的役割を担っているのではないかと考えてしまう。

   次に、ニノマエの出現。結局クローンを支持するのが良いのか、自ら心臓を止めたのを支持するのが良いのかよくわからなくなってしまった。
   最後のシーンと突き合わせるとクローンなのだが、当麻のSPEC発動時のニノマエによる説明を考えると心臓を止めたと考えられなくもない。
   おそらくクローンなのだろうけど、そうだとすると疑問点がいくつかある。そのうち、ニノマエのSPECのここが気になるというところを挙げてみたいと思います。

   これもニノマエのSPECに関連するのだけど、簡単に書いてしまえば、当麻に電撃が当たっていないのはなぜ、です。
   釘が当麻の目まで向かい、そこから電撃が飛んで失明してもおかしくないように思えるのにそうはなっていない。瀬文の回復力が驚異的なことを考えると、何らかのダメージはあったけどすぐに直ったとか、運良く電撃が当たらなかったなどが考えられるのだが、少し引っかかる。
   どちらかというと電撃よりもニノマエのSPECの効力を考えてしまうシーンだったので運が良かったとしておいてもいいのですが。

   最後に気になったのは、心停止からの瀬文の復活。
   にんにくの臭いすげぇーとなっても良いし、映画館でも笑っている人がいたシーンなのではあるが、最後に当麻が病室で左手を出したカットが復活との関連を考えさせずにはいられない。
   瀬文はSPEC持ちではないようなので、冥界から引っ張ってくるわけにはいかない?のだろうが、何も関連はないのだろうか?

   他にも、写真に挟んだSDをコピーした人は、それ以降は目だった動きを見せなかったし、とにかく伏線が多い映画でした。

   ただ、せっかくパンフレットを買おうと思ったのに売り切れだったのが心残り。

2012年4月10日火曜日

『SPEC~零~』のコミックを読んでわずかばかりの感想

   『SPEC~翔~』を見た勢いで、コミックとして出ている『SPEC~零~』を買って読んだのでわずかばかりの感想を。

   当麻が来て最初の未詳での事件であり、瀬文が未詳に来る以前の事件であり、ドラマシリーズの前日譚。
   いくつかドラマシリーズでもスペシャルドラマ『SPEC~翔~』でも見なかったような人がいたりして、映画あるいは『SPEC~?=結~』への布石がある感じではあったが、ストーリー自体には特に思うところはないかなというところ。

   どちらかというとコミック内で出てきた人だったり用語だったりが気になったのでそれらを書きたいと思います。

   一つ目は「心霊手術」です。
   「心霊手術」とは、メスといった器具ではなく主に手を用いて腹部等の手術を行うが、その際に血が出たりするものの患者には不思議と痛みが無く、手術後に傷が残っていないという手術らしいです。
   うーん、怪しいですね。
   少し検索してみて上位のサイトをいくつか見てみたのですが、あんまり書くと別記事ができそうなので見たということ以上は言及しないことにします。
超能力といった不思議能力はエンターテイメントとして楽しんでおくのがちょうどよいでしょうし。

   二つ目は「当麻のSPECの表現について」です。
   死者を引き出す描写は鋼の錬金術師に近い気がします。スペシャルドラマ内での死者を引き出す演出がシンプルであったのを思い出すと、それぞれのメディアでの効果的な演出を考えた結果なのかもしれません。

   三つ目は「ナンシー大関」です。
   ナンシー大関ってどこかで聞いたことあるなぁと思ったら、ナンシー関という人がいました。僕はナンシー関という人をテレビで見た記憶はなく、たしか夏休み前くらいになると本屋に置いてある角川文庫あたりの読みたい文庫100をまとめた小冊子に、消しゴム版画が趣味の人みたいな感じで紹介してあるのを見たような記憶があります。Google画像検索で見てみるとコミック内で出てくるように大柄な人のようで、マツコ・デラックスそっくり。(マツコ・デラックスが公式で影響を受けてたりするのかな?)

   最後に。
   あと、野々村係長はあの足の挟み方はぜったい足が持ってかれたはず。土踏まずで分断される勢い。痛そう!

   あやうく終わるところでしたが、零->霊でしょうか?
   たぶんそんな気がします。気づくの遅っ!
 

2012年4月4日水曜日

『SPEC~翔~』を見たわずかばかりの感想

   2012年4月1日にテレビで放映されたスペシャルドラマ『SPEC~翔~』を見てのちょっとした感想です。

   このドラマシリーズを最初に知ったのは確か新聞のテレビ欄で、「派手な特殊能力をドラマのスパイスにして、強大な力を持つがそれ故に悩みも持つ主人公の話」とかなんだろうと思って冷やかし気分で1話目を見たらあっさりハマってしまったのを覚えています。

   別に地味な特殊能力であるよりは使ったことがわかりやすい方が絵としてもおもしろいので、派手なのは嫌いではないのですが、そこだけがおもしろいだけで使い古された安いエピソードで構成された話だと見ていて落ち着かないので、このドラマはそういったところがないのもハマった点だと思います。
   他には、主題歌やドラマ内で用いられる音楽も好みにぴったりでした。

   さて、それで今回のスペシャルドラマなのですが、前半はこれまでのまとめと思われる部分もあり、スペシャルドラマという位置づけではあるといえどことなく冗長だなぁといった感じでした。
   志村美鈴(物体に触ると持ち主に関連した映像が見れるSPEC)の芸大を退学したエピソードなどはSPECらしくないなぁと思う場面でした。
   SPECが発現してすぐのエピソードならともかく、既にしばらく時間が経っているわけだから自分の能力があのような場合にどのような不利な場面を導くかは何度か経験しているはずです。
   瀬文に、ひいては視聴者に能力がある故の苦悩みたいなのを見せるにはもっと他のエピソードはなかったのだろうかと思うところです。(それとも、他の考えがあったのでしょうか)

   しかし、そうは言っても葬式の場面になったあたりからSPECらしさを取り戻してきて、そこからは最後までただただ画面に釘付けでした。
   当麻のSPECも眼鏡の女子高生に負けず劣らずチートな感じでしたが、死者を地面から引き出すシーンを見ればちょっとばかし万能そうでもいいかという気分になりました。
   まさに死者は地の下から引き出されるのであり、その地の下の死者の世界を考えると、毛が逆立つのを感じました。冷泉(未来を予知するSPEC)が身体を斜めにしてポチャンと地の下へ帰るあたりもよかったです。地面が波打つ感じがたまらない!

   個人的には、当麻とサトリ(人の心を読むSPEC)が一緒に踊るところでかなり笑わせてもらったし、なんだかんだで今回のSPECの中で一番良いシーンだったと思います。
   どの人物もキャラが立っているのでそれだけでおもしろいのですが、別に踊りいらないじゃんといった部分も込みで成り立っているところがこれまたよかったです。

   やや引っかかったところとしては海野先生(病を処方するSPEC)が当麻の人柄が云々と言っているあたりで、そんな言葉をライアーゲーム2の中で聞いたぞと思いながら、当麻である戸田恵理香という役者がそういう役回りが多いのかなぁといったことも思いました。
   海野先生が言う通り「死者を呼び出すだけのSPEC」であるならばパロってるわけではなさそうですし。ただ、いつの間にサトリがSPECを貸すほどに信頼されてたのかいまいち思い出せなくて、この点がはっきりすると海野先生はちょっと間違っているということもでてくるとは思うのですが、いつだったのでしょう?

   他には、海野先生が本当に左手を使えなくしたのかや、左手の神経が死んでれば死者を引っ張りあげられないのか、雅ちゃんタイミング良すぎて怪しすぎね?といった謎も多いのですが、何はともあれ気になるなら映画を見に行かないとということなのでしょう。

   そういえば、今回のドラマスペシャルは「翔=承」で映画は「天=転」で、Wikipediaを見ていみるとやはり起承転結の「?=結」についても構想があるみたいですが、どうなるんでしょう?もう一回映画ですかね?

   もうしばらく楽しめるというのはうれしい限りです。